平成23年版 消防白書

2 今後の取組

(1) 航空消防防災体制の整備

大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応するため、消防庁では、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、平成23年9月現在、2県域を除いて45都道府県域で配備されている。平成21年3月には「消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会」の報告書(参照URL:https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h23/items/210326-2_3.pdf)において、 〔1〕全ての災害活動機に係る安全対策等の構築、〔2〕空中消火技術のより効果的な活用体制の構築、〔3〕救急活動への積極的な活用推進体制の構築、〔4〕365日・24時間運航体制の構築について検討結果がとりまとめられた。このうち、西日本における365日・24時間運航体制の構築のため、消防組織法第50条の無償使用制度により、新たに平成23年8月9日に京都市消防局に消防庁ヘリコプター1機の配備を行った。さらに、平成24年の埼玉県への配備も決定しており、東日本大震災において被害を受けた宮城県にも順次配備予定である。
大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して、上空から情報収集活動を行うことが極めて有効であり、地上からのアプローチが困難な場合でも確実に救助活動に着手できることは、先般の東日本大震災で立証済みである。また、大規模な林野火災等においても、消防防災ヘリコプターを活用し、地上での消火活動が困難な区域に、空中から消火活動を実施することで、火災の延焼防止・早期の鎮火を図ることができる。
このため、消防庁では、緊急消防援助隊として出動する消防防災ヘリコプター、ヘリコプターテレビ電送システム、赤外線カメラ等の高度化資機材、消火用タンク及びヘリコプター用衛星電話の整備に対して補助金を交付し、大規模災害時等における航空消防防災体制の充実強化を図っている。
これらに合わせて、ヘリコプター動態管理システムの整備を進めることにより、活動現場における消防防災ヘリコプター間のネットワークを構築するとともに、大規模災害時の消防庁におけるオペレーションを確実かつ機動的なものに進化させているところである。
また、悪天候時でも消防防災ヘリコプターの広域応援を行ううえで、低高度のIFR(計器飛行方式)幹線ルート網の構築は重要な課題である。消防庁では、新潟・福島間に開設された災害対応専用のRNAV(広域航法)経路の検証飛行を平成22年6月に実施したところである。

(2) 消防防災ヘリコプターの安全な活動の確保に向けて

消防防災ヘリコプターの出動回数は年々増加しており、近年の大規模災害においては、多くの消防防災ヘリコプターが緊急消防援助隊として出動し、その高速性、機動性を活かした迅速な情報収集、指揮支援、消火・救急・救助活動を実施するなど、大きな役割を担っている。
一方で、平成21年9月に岐阜県の北アルプスで救助活動中の消防防災ヘリコプターが墜落し、搭乗していた3名が死亡する事故が、また、平成22年7月には埼玉県秩父市の山中で救助活動中の消防防災ヘリコプターが墜落し、搭乗していた5名が死亡する事故が発生している。これらの事故を受けて消防庁では、「消防防災ヘリコプターによる山岳救助のあり方に関する検討会」を平成22年10月に立ち上げ、運航重量や出動判断等について検討を行っており、消防防災航空隊の活動時における安全確保を推進していくところである。

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